もの忘れ

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院長 岩田智則

えびな脳神経クリニック
院長 岩田智則

日本脳卒中学会(評議員)
日本血管内治療学会(評議員)
日本脳循環代謝学会(評議員)
米国心臓協会国際フェロー(Fellow of AHA・脳卒中部門)
日本神経学会専門医/指導医
日本内科学会総合内科専門医/指導医
日本脳卒中学会専門医指導医
日本認知症学会専門医指導医
厚生労働省認定外国人医師臨床修練指導医

詳しいプロフィールはこちら >

もの忘れは、誰もが経験することがある症状です。

しかし、年齢を重ねるにつれて、もの忘れが頻繁に起こるようになったり、日常生活に支障をきたすようになったりすると、もの忘れの原因を疑う必要があります。

「年のせいだから」と決めつけず、原因となる病気が隠れていないかを一度確認することが大切です。

本記事では、もの忘れの原因と症状について、わかりやすく解説します。

もの忘れの原因

もの忘れの背景には、さまざまな要因が関わっています。

大きく分けると「加齢に伴う変化」「病気による変化」があります。

加齢による脳の変化

脳は、年齢を重ねるにつれて萎縮していきます。

特に、記憶をつかさどる「海馬(かいば)」という部分が小さくなると、新しいことを覚えたり、最近の出来事を思い出したりする力が弱くなり、もの忘れが起こりやすくなります。

このような加齢による変化は、多くの方に見られる「生理的な(自然な)もの忘れ」です。

病気や障害によるもの忘れ

一方で、次のような要因によって、脳の萎縮や機能低下が通常よりも早く、あるいは強く進んでしまうことがあります。

  • アルツハイマー病などの認知症
  • 脳梗塞・脳出血などの脳血管障害
  • 頭部外傷(転倒・交通事故などのあと)
  • 脳腫瘍 など

脳の病気や障害によって引き起こされるもの忘れは、加齢によるもの忘れとは異なり、日常生活に支障をきたすような重度のものとなる可能性があります。

生活習慣やストレスも影響します

海馬の萎縮や脳の機能低下は、加齢だけでなく次のような要因でも進みやすくなると考えられています。

  • 慢性的なストレス
  • 睡眠不足
  • 運動不足
  • 喫煙
  • 過度の飲酒
  • 生活リズムの乱れ など

「最近よく眠れていない」「忙しくて運動不足が続いている」という方は、生活習慣を整えることも、もの忘れ予防の大切な一歩です。

もの忘れの症状

もの忘れの症状は以下の様なものがあります。

  • 名前や場所、出来事などの記憶が思い出せなくなる
  • 物事を忘れて、同じことを何度も聞く
  • 会話の内容を覚えていない
  • 道を覚えていない
  • 計算が苦手になる
  • 判断力が鈍くなる

こうした症状が続く場合は、「年のせいかな」で終わらせず、一度しっかり状態を確認することをおすすめします。

認知症と老化によるもの忘れの違い

「もの忘れ=すぐ認知症」というわけではありません。

しかし、認知症と老化によるもの忘れには次のような大きな違いがあります。

厚生労働省の「あたまとからだを元気にする MCI ハンドブック」でも、以下のような違いが示されています。

代表的な違い

体験そのものを忘れてしまうかどうか

  • 認知症:体験したこと自体をすっかり忘れている
  • 老化によるもの忘れ:体験したことは覚えているが、細かい内容を思い出せない

もの忘れの自覚があるかどうか

  • 認知症:本人に自覚がないことが多い
  • 老化によるもの忘れ:本人も「最近忘れっぽいな」と自覚がある

症状の進み方

  • 認知症:症状が少しずつ進行し、日常生活に支障が出てくる
  • 老化によるもの忘れ:進行は緩やかで、基本的な日常生活は保たれている

物がなくなったときの反応

  • 認知症:誰かに盗られたのではないかと疑ってしまう
  • 老化によるもの忘れ:自分で探して、見つけようとする
認知症老化による物忘れ
もの忘れの特徴体験したことそのものを忘れる体験したことの一部を忘れる
もの忘れの自覚自覚はない自覚はある
症状の進行進行する徐々にしか進行しない
物がなくなったときの反応誰かに盗られたと思う自分で探して見つける

また、物忘れしている自覚が認知症の方にはありません。

そのため、何度も同じ質問をされることに対して「さっきも答えたでしょ!」と怒っても、「なぜ急に怒られたのだろう?」と思われてしまいます。

ご家族のイライラも当然ですが、「本人には悪気がない」「自覚がない」という特徴を知っておくだけでも、少し気持ちが楽になるかもしれません。

→認知症について詳しく知りたい方はこちら

厚生労働省 あたまとからだを元気にするMCIハンドブック ーもの忘れと認知症の違いー

https://www.mhlw.go.jp/content/001100282.pdf

もの忘れで“受診を考えるべきサイン”

次のような「もの忘れ」がみられるときは、「年のせい」と決めつけず、一度ご相談ください。

  • ここ数ヶ月のあいだに、もの忘れが増えたと家族から言われる
  • 同じ質問や話を何度も繰り返すことが増えた
  • 今日の日付・約束・予定をよく間違えたり忘れたりしてしまう
  • 財布・鍵・通帳など、大事な物をよく失くすようになった
  • 料理・買い物・金銭管理など、今まで普通にできていたことにミスが増えた

特に早めの受診をおすすめしたいケース

  • 数ヶ月〜1年ほどの間に、もの忘れや失敗が急に目立ってきた
  • 火の消し忘れ・ガスの締め忘れなど、生活上の危険な場面が増えた
  • 「お金を盗られた」など、被害妄想のような発言や性格の変化が強くなってきた
  • 道に迷う・場所が分からなくなることが増え、一人で外出させるのが不安になってきた
  • ご家族が「このまま一人で見守るのは心配だ」と感じる場面が増えている

※早めに専門医へ相談することで、治療や支援の選択肢が広がります。

検査を行う意味とメリット

加齢か病気かを明確に切り分けられる

MRIや認知機能検査を行うことで、「加齢による変化なのか」「病気のサインなのか」を医学的に判断できます。

これは、今後の生活設計にも直結する大切なポイントです。

早期であれば治療薬の選択肢が広がる

ケサンラやレケンビなどの新しい認知症治療薬は、“早期に見つけた人ほど” 効果が期待できることが分かっています。

適応できる時期は限られているため、早く気づくことで治療の幅が広がります。

▶︎ レカネマブ(レケンビ®)について

▶︎ ドナネマブ(ケサンラ®)について

生活上の工夫や支援を適切に始められる

病気の有無に関わらず、「どう過ごせばよいか」「気をつける点は何か」といった具体的な対策は、検査結果に基づくことでより適切に行えます。

家族が負担を抱え込む前に対策できる

もの忘れは、ご本人だけでなく周囲のご家族の負担にも影響します。

早めに状況を把握することで、必要な支援制度や相談窓口へつながりやすくなり、「知らないまま不安が膨らむ」状態を避けられます。

検査は“怖いもの”ではなく、“これからを安心して過ごすための一歩”。

そう思っていただけるよう、当院では認知症疾患医療センターによる電話相談や認知症専門医による丁寧な説明・診療を心がけています。

当院で行える検査・診断

えびな脳神経クリニックでは問診の上、下記の中から必要な検査を行い、原因を特定し適切な治療をご提案いたします。

MRI

CT

認知機能検査

血液検査

心電図

超音波検査

・・など

もの忘れは誰にでも起こり得る症状です。

しかし、脳の病気かどうかを一度確認しておくことで、今後の生活への安心が大きく変わります。

当院の特徴

POINT 01
🧠

当日MRI・CTで早期に原因を確認

MRI2台・CT完備。
多くの方が受診当日に画像検査〜結果説明まで完了します。
「脳の病気かどうか」を早めに確認することで、安心につながります。

POINT 02
👨‍⚕️

脳神経外科 × 脳神経内科が物忘れの原因を総合評価

加齢による物忘れから、アルツハイマー型認知症・血管性認知症などの認知症疾患まで幅広く診断します。

POINT 03
📊

認知症疾患医療センター(連携型)として支援

地域の医療機関・介護事業所・行政と連携。
診断だけでなく、その後の治療や生活支援まで見据えてサポートします。

POINT 04

夜・土日も診療で、ご家族も通院しやすい

平日21時/土曜18時/日曜13時まで診療。
※初診は診療終了の1時間前まで

POINT 05
🚉

海老名駅直結の通いやすい立地

駅直結のViNA GARDENS PERCH 6階
足腰に不安がある方でも、移動の負担を最小限に通院していただけます。

POINT 06
🏥

入院・高度検査が必要な場合もスムーズにご紹介

入院や精密検査が必要な場合も、地域病院とスムーズに連携します。

「年齢のせいかな…」と思う物忘れも、一度確認するだけで大きな安心につながります。

まとめ

本記事では、もの忘れの原因と症状、認知症との違いについてお伝えしました。

ポイントを整理すると、以下の点が大切です。

  • 年齢とともに誰にでももの忘れは起こる
  • ただし、日常生活に支障が出てきた場合は、病気が隠れている可能性がある
  • 認知症と老化によるもの忘れでは、「忘れ方」や「自覚の有無」に違いがある

もの忘れ予防のために心がけたいこと

脳の健康を保つために、次のような生活習慣が役立つとされています。

  • 適度な運動:運動は、脳の血流を改善し、脳の機能を活性化します。
  • バランスの良い食事:脳の健康に必要な栄養素をバランスよく摂取しましょう。
  • 十分な睡眠:睡眠不足は、脳の機能を低下させます。
  • ストレスを溜めない:ストレスは、脳の萎縮を促進します。
  • 喫煙やアルコールの過剰摂取を控える:喫煙やアルコールの過剰摂取は、脳の健康に悪影響を及ぼします。

こうした積み重ねが、もの忘れや認知症の予防につながります。

また、「最近少し気になるな」と感じたときこそ、早めに相談しておくことで、選べる対策や治療の幅が広がります。

もの忘れに関するQ&A

Q:もの忘れは認知症の前兆ですか?
A:もの忘れは、認知症の初期症状である可能性があります。しかし、もの忘れが認知症の初期症状であるかどうかは、必ずしも断言できません。もの忘れが気になったら、早めに医療機関を受診して、原因を調べることが大切です。
Q:もの忘れの治療法はありますか?
A:もの忘れの治療法は、原因によって異なります。 加齢によるもの忘れ:特に治療法はありませんが、予防法に心がけることで、症状の進行を遅らせることができます。 脳の病気や障害によるもの忘れ:病気の原因や進行度に応じて、薬物療法や手術療法などの治療が行われます。

院長からひと言

院長 岩田智則

えびな脳神経クリニック
院長 岩田智則

物忘れは「年だから仕方ない」と思われがちですが、背景には加齢だけでなく、治療できる病気が隠れていることもあります。

認知症と聞くと将来を不安に感じてしまう方もいらっしゃいますが、早く気づき、早く対応することで、これまで通りの生活を続けている方も多くいらっしゃいます。

大切なのは、一人で抱え込まないことです。

少しでも気になる変化があれば、どうぞ遠慮なくご相談ください。

当院では医師の診察だけでなく、リハビリ・介護・生活支援を含めたチームで、ご本人とご家族を長く支えていく医療を大切にしています。

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